科学的根拠に基づく「美容に良い飲み物」を化粧品研究者が徹底解説

毎日摂取する飲み物でキレイな肌を導くことが出来れば、これほど嬉しいことはありません。本記事では科学的根拠に基づく「美容に良い飲み物」について、現役の化粧品研究者が解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2022.06.06
誰でも

スムージーや白湯など、美容に良いとされる飲み物は多数知られています。一方で何となく美容のためにこれらの飲み物を飲んでいるけど、本当に美容効果があるの?と疑問に思っているという方は多いのではないでしょうか?

毎日摂取する飲み物でキレイな肌を実現することが出来れば、これほど嬉しいことはありません。一方でどんな飲み物に美容効果があるのかについて、確かな科学的根拠を元に解説した情報はほとんどありません。

そこで本記事では、現役の化粧品研究者である筆者が、論文情報などの科学的根拠に基づいてオススメする美容に良い飲み物について解説します。

  • 科学的根拠のある「美容に良い飲み物」とは?

  • 白湯やスムージーは美容に良い?

  • 水をたくさん飲むと肌に良いって本当?

上記のような、美容と飲料に関する疑問について現役の化粧品研究者がお答えします。

また本ニュースレターでは無料会員・有料会員のメンバーを随時募集しております。毎週配信されるニュースレターを見逃さないようにするためにも、ぜひメンバーシップに登録頂ければ嬉しく思います。

上記の登録ボタンからメールアドレスで簡単に登録できますので、ぜひこの機会にご検討ください。それでは早速解説を始めていきましょう。  

***

美容に良い飲み物は存在するのか?

これまでに私のニュースレターで何度も解説してきたように、毎日摂取する食事は肌のコンディションに極めて大きな影響を与えています。そしてこれは毎日摂取する飲み物にも全く同じことが言えます。

テレビやネットでは、芸能人が美容のために毎朝オリジナルのスムージーを作ったり、白湯を飲んでいたりという話をよく耳にすると思います。果たしてこれらの飲み物は本当に美容に良いと言えるのでしょうか?

今回は美容効果のエビデンスが確認されている飲み物という観点で、論文情報を詳しく調査しました。飲み物と肌状態の関係について検証した論文は少ないのですが、その中から見つけることが出来た研究結果について皆さんにご紹介します。

結論から述べると、美容に良さそうと言える飲み物は確かに存在します。ただし豊富な研究結果が存在するかと言われるとそういう訳ではないので、まだまだ今後の検証も必要な領域です。

しかし研究結果が論文として報告されているというだけでも、テレビやネットの情報と比べると格段に参考になる情報だと思います。ぜひ以降の解説内容を、毎日の飲料習慣について見直す際の参考にしてみて下さい。

***

コーヒー

確かな科学的根拠がある美容に良い飲み物として、まず挙げられるのがコーヒーです。私が調べた限りでは、美容に良い飲み物の代表格はコーヒーであると言えると思います。コーヒーの摂取による美容効果について、これまでに報告されている研究結果を以下に紹介します。

まずネスレジャパンなどが報告したこちらの論文では、30歳から60歳までの健康な日本人女性244人を対象に、日々摂取する食品・飲料と肌の色素沈着の関係性が調査されています。具体的には、アンケートによって取得された食習慣情報と肌計測装置VISIAで測定した肌状態パラメータの相関解析が行われています。

その結果、ポリフェノールを多く含む食品の摂取によって肌質に関係なく色素沈着スポットの発生率が抑制されることが明らかとなりました。その中でも特に影響が大きかったのコーヒーであり、1日に400mg(約1.5杯分) 以上を摂取した場合に色素沈着スコアが統計的有意に抑制されることが明らかとなりました。以上の結果から、1日1~2杯程度のコーヒーの摂取が肌の紫外線抵抗性を向上させ、日焼けに強い肌を導く可能性が示唆されました。

また花王から報告されたこちらの論文では、軽度の乾燥肌を持つ女性被験者49名に対して、クロロゲン酸をはじめとするコーヒーポリフェノールを含む試験飲料を、1日270 mg・8週間摂取してもらった際の皮膚状態の変化が検証されています。

その結果、コーヒーポリフェノールを含む飲料の摂取によって皮膚の乾燥スコアが有意に低下し、角層の水分量が増加することが明らかになりました。また角層中の遊離脂肪酸と乳酸量の有意な増加も確認され、皮膚バリア機能・保水性の改善傾向が認められました。

またこちらの論文では、コーヒーと酒さの関係性が大規模なコホート研究によって調査されています。酒さは中高年以降に発症しやすい赤ら顔症状を示す皮膚疾患です。白人女性82737人に対して、15年間のコーヒー・紅茶・炭酸飲料・チョコレートの消費量と酒さの発症率との関係性が解析されています。

その結果、酒さの発生率とカフェイン入りコーヒーの摂取量に負の相関傾向があることが明らかとなりました。すなわちカフェイン入りのコーヒーを多く飲む人ほど酒さの発生率が低いということです。特に月に1杯もコーヒーを飲まない人と1日4杯以上飲む人の間では、酒さの発生率に統計的有意な差が認められています。

一方でカフェインレスコーヒーでは有意差は認められず、更に紅茶や炭酸飲料などのコーヒー以外の飲料でも酒さのリスク低下は確認されませんでした。カフェインの血管収縮作用と免疫抑制作用が酒さのリスクを低下させるのではないかと予想されていますが、そのメカニズムについてはまだ十分に明らかにはなっておらず、今後の研究が期待されます。

以上のようにコーヒーには論文ベースで様々な美容効果が確認されています。コーヒーに期待できる美容効果は、主に以下の4つです。

  • 紫外線抵抗性の向上

  • 皮膚バリア機能の改善

  • 肌水分量の向上

  • 酒さの予防

特にコーヒーポリフェノールの抗酸化作用に由来する紫外線抵抗性の向上効果は多数の報告があり、コーヒーは美容にオススメ出来る飲料と言って間違いないと思います。

またご存知の方も多いと思いますが、コーヒーは健康面でも多数の良い効果が確認されています。具体的にはコーヒーを1日3~4杯摂取することで、心疾患や脳血管疾患・呼吸器疾患の発症リスクが低下することが確認されています(参考文献)。

近年の研究結果から、コーヒーは美容と健康に非常に良い飲料であることはほぼ間違いないと言われています。私もこのような研究結果を知っていたため、コーヒーは最低でも1日2杯は飲んでいます。コーヒー好きの皆さんは、ぜひ今後もコーヒーを飲み続けて下さいね。

***

緑茶

コーヒーは美容と健康に効果的な一方で、カフェインを含むため摂取を控えているという方も多いと思います。そんな方にオススメなのが日本人にも馴染みの深い緑茶です。緑茶もコーヒーと同じく美容効果のエビデンスが確認されており、オススメの飲み物であると言えます。緑茶の美容効果を確認した研究について、以下に紹介します。

まずこちらの論文はコーヒーの解説で最初に紹介した論文と同じですが、30歳から60歳までの健康な日本人女性244人を対象として様々な食品・飲料と色素沈着の関係性が解析されています。その結果、1日にポリフェノール換算で41mg(約カップ半分)以上の緑茶を摂取したグループにおいて、色素沈着スコアの有意な抑制が確認されています。

またこちらの論文では、緑茶ポリフェノール抽出液と牛乳を混ぜたドリンクによる肌質改善効果が検証されています。44名の健康な被験者に対して240 mlの試験飲料を6ヶ月間継続摂取してもらった結果、プラセボ群と比較して緑茶ドリンクの摂取群で抗酸化指数と抗酸化酵素活性が有意に増加し、皮膚のシワやざらつきの著しい低下が確認されました。

またこちらの論文では、計100名の健康な被験者に緑茶カテキンを6~12週間経口投与した6件のランダム化比較試験を解析したメタアナリシスの結果が報告されています。緑茶カテキンを1日あたり540 mg以上摂取することにより、PGE2・12 HETE・CPDなどの炎症関連分子が抑制され、軽度の日焼けに対する良好な保護効果があることが示されました。

このように緑茶もコーヒーと同じく、豊富に含まれるポリフェノールやカテキンによって高い美容効果が期待できます。緑茶に期待できる美容効果は以下の3つです。

  • 紫外線抵抗性の向上

  • 皮膚炎症の低減

  • シワやキメの改善効果

特にコーヒーによく加えられる砂糖やミルクなどは肌への悪影響が大きいことが知られており、ブラックコーヒー以外は中々摂取をオススメすることが出来ません。そのような方は緑茶を毎日のメイン飲料として摂取すると、美容効果が期待できると言えるでしょう。

***

その他の飲料

美容に良い飲料の代表格はコーヒーと緑茶であり、これらの2つの飲料は美容効果に関するエビデンスが論文ベースで多数報告されています。一方でその他の飲料についても、各論レベルにはなりますがいくつか美容効果に関する研究報告がありましたので、以下に紹介します。

甘酒

甘酒も美容に良いとよく言われますが、甘酒の美容効果を研究的に確認した論文が森永製菓から報告されていました。こちらの論文では、40~60代の日本人女性17名を対象に、100 mLの甘酒を1日2回・4週間継続摂取した際の肌の変化が検証されています。

その結果、甘酒の摂取によって皮脂量の減少と共に顔色・目の下のクマ・髪のツヤ・目覚めの良さなどの改善効果が確認されました。まだまだ検証が必要ですが、甘酒の美容・健康効果を示唆する研究結果と言えるでしょう。

ザクロジュース

ザクロの摂取による紫外線抵抗性の向上効果が報告されています。こちらの論文では、30~45歳の女性74名に対して約240 mLのザクロジュースを12週間継続摂取した際の肌の変化が検証されています。

その結果、ザクロジュースの摂取によって紫外線による炎症惹起やメラニン産生量の有意な低下が確認され、紫外線抵抗性の向上が認められました。ザクロにはプニカラジンやエラグ酸などのポリフェノールが豊富に含まれており、これらの成分が日焼けによるダメージ低減に寄与していると推定されます。

コケモモ・アムラ果実ドリンク

コケモモアムラ果実と呼ばれる特殊な果物を含むドリンクによる美容効果も報告されています。こちらは資生堂が特許を取得しているドリンク成分でもあります。

こちらの論文では99名の健康な女性を対象に、コケモモエキスとアムラ果実エキスを含むドリンクを1日1回50mL・12週間摂取した際の肌状態の変化が、ランダム化比較試験により解析されています。

その結果、ドリンクの摂取によって皮膚の厚さ・角層水分量・シワ・皮膚弾力性が統計的有意に改善されることが明らかとなっています。これらのドリンク成分は、アンチエイジング飲料としての効果が期待できるでしょう。

***

スムージーや白湯は美容に良い?

ここまでで美容に良いとされる様々な飲料をご紹介しましたが、テレビやネットなどで一般的に美容に良いと言われているスムージー白湯などの美容効果はあるのでしょうか?結論から申し上げると、これらの飲料に関する論文は報告されておらず、明確な美容効果は確認されていないと言えると思います。

しかし論文が報告されていないということは、スムージーや白湯が美容に良いというエビデンスは誰も確認していないということですので、全く効果が無いと言い切れるわけでもありません。

もしこれらの飲料を飲んでいて効果実感があるという方は、これからも飲み続けると良いでしょう。そうでない方は、無理に摂取を続ける必要は無いと思います。エビデンスや効果を重視したい方には、コーヒーや緑茶の摂取の方がオススメです。

スムージーを飲んでいる方に注意して頂きたいことは、果糖の摂り過ぎです。飲みやすさを重視して野菜とフルーツをミックスしてスムージーを作る方も多いと思いますが、果糖の摂り過ぎは美容と健康に極めて悪影響が大きく、オススメ出来るものではありません。

糖分の摂り過ぎは体内の糖化レベルを向上させ、シワやたるみ、更にはガンの発症リスクを向上させるなど様々な悪影響が報告されています。スムージーなどを摂取する際には、必ず果物などの果糖を摂り過ぎていないかという点は気を付けておきましょう。

また近年健康に良いと話題の白湯ですが、当然ながら美容効果のエビデンスは確認されていません。しかし水分を一日2L程度摂取すると、肌の水分量が向上するという研究報告がいくつか報告されています(参考文献参考文献)。

白湯に限定する必要はないと思いますが、1日2Lを目安に水分を摂取することは、肌の水分量改善効果があるのでオススメと言えるでしょう。ただし水分も一気に摂り過ぎると水中毒などの重要な疾患に繋がりますので、こまめに水分摂取をすることが重要です。

***

まとめと編集後記

以上、今回は美容に良い飲み物というテーマで論文情報などを幅広くご紹介しました。身近なコーヒーや緑茶に美容効果が確認されていることに驚かれた方も多かったのではないでしょうか。

一方でネットやテレビなどでよく取り上げられている飲み物の美容効果については、非常にエビデンスが乏しいのが現状です。美容効果のエビデンスを重視する方は、今回ご紹介したコーヒーや緑茶を中心に摂取すると良いでしょう。

また飲み物に限らず、食生活全般を改善することは美容において非常に重要だと私は考えています。高い化粧品を使っているのに中々肌が良くならないという方は、まずは食習慣を見直すことが極めて重要でしょう。

美容における食事の影響は皆さんが思っている以上に大きいですので、ぜひ本記事を読んで頂いた方は注意してみてください。

今週も読んで頂きありがとうございました!そして来週からは有料記事が続きます。継続的な配信をご希望の方はぜひ以下よりログイン後、有料会員にご登録頂ければ幸いです。

段々と気温も上がり、夏の兆しが見えてきましたね。紫外線対策に一層注意して、過酷な夏を乗り切りましょう。それではまた来週、お会いしましょう!

・美容の正しい知識が身につく
・最先端の美容情報をお届け
・過去の記事も読み放題
・毎週届き、いつでも配信停止可
・読みやすいレターデザイン

すでに登録済みの方は こちら

サポートメンバー限定
ビタミンCサプリは飲む意味なし!?化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
2024年最新版|優秀成分『ナイアシンアミド』の美容効果と使い方
サポートメンバー限定
正しい?間違い?スキンケアのギモンを化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
ニキビ肌|徹底改善スキンケア特集
サポートメンバー限定
グリセリンフリーは選択すべき?化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
化粧品研究者が徹底解説|エビデンスに基づく最高のスキンケア方法【Par...
サポートメンバー限定
化粧品研究者が徹底解説|エビデンスに基づく最高のスキンケア方法【Par...
サポートメンバー限定
美肌を持続させるカギ|肌の酸化に対抗する『抗酸化力』を化粧品研究者が徹...