アンチエイジングに必須|糖化の対策方法について化粧品研究者が徹底解説

糖化の対策は若々しい肌を保つ上で極めて重要なポイントです。本記事では科学的根拠に基づく糖化対策について、現役の化粧品研究者が徹底解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2022.09.05
誰でも

近年美容において注目度が高まっているのが糖化(とうか)です。美容に詳しい方であれば、糖化という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。

糖化は肌のシワやたるみ・美白などに極めて大きな影響を与えており、美しい肌を維持するためには糖化の対策が欠かせません。一方で「糖化ってよく聞くけど中身がよく分からない」「どのように糖化対策すれば分からない」という方も多いと思います。

そこで本記事では現役の化粧品研究者である筆者が、糖化のメカニズム糖化の対策方法について分かりやすく解説します。

  • 糖化ってそもそも何なの?

  • 糖化が起こると肌はどのように変化するの?

  • 科学的根拠に基づく糖化の対策方法とは?

主に上記の内容について、科学的根拠に基づいて基礎から丁寧に解説します。

糖化は肌の老化に極めて大きな影響を与えており、アンチエイジングのためには糖化対策が欠かせません。ぜひ本記事で糖化のメカニズムと対策方法について学び、美しい肌を導いてください。

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糖化って結局何なの?

糖化(とうか)という言葉は、ネットや美容雑誌などで近年非常によく目にするようになりました。しかし糖化について科学的に正しく理解できている人は、美容の専門家でもほとんど存在しないと思います。

そもそも糖化とはどのような現象なのでしょうか?まずは糖化の基礎的な内容から、一般の皆さんにも分かるように丁寧に解説していきたいと思います。

糖化とは非常にざっくりと言うと、その名の通り「糖になること」を意味します。より正確に言うと、「体内に存在する糖が臓器や組織のタンパク質に結合すること」を糖化と呼びます。ここでいう「糖」とは一般的な糖質や糖分、いわゆるグルコース・フルクトース(果糖)などのことを指します。

糖が臓器や組織に結合するってどういうこと?と思った方も多いと思います。ここでぜひ皆さんに覚えておいて欲しいのは、糖は体内の組織に結合しやすい性質を持っているということです。これを理解しておけば糖化を正しく理解するのは簡単です。

では糖が臓器や組織に結合する駆動力は何でしょうか?それは化学反応です。実は糖は、様々な物質と非常に化学反応を起こしやすいことが知られています。では更にもう一歩踏み込んだ疑問として、なぜ糖は化学反応しやすいのでしょうか?そこで改めて、高校で勉強した化学・生物の内容を振り返っていきたいと思います。

以下には糖(グルコース)の化学構造を示しました。糖は体内のように水分が多い環境では、下図のように環状構造鎖状構造を行き来しています。通常皆さんがよく知っている糖の構造は下に示した環状構造だと思いますが、水分が豊富に存在する体内では上に示した鎖状構造も多数存在しています。

そして糖がこの鎖状構造になった時に生成するのが、図の赤丸で示したアルデヒド基(CHOです。

実はこのアルデヒド基は、体内の臓器や組織を作っているタンパク質と非常に化学反応を起こしやすいという性質を持っています。つまり開環してアルデヒド基を持つようになった糖は、臓器や組織と非常に結合しやすいということです。

そして一度タンパク質に結合してしまった糖は、簡単にはタンパク質から外れないことが知られています。つまり糖が臓器や組織のタンパク質と次々と化学反応を起こして結合してしまい、タンパク質に糖が蓄積されていく状態が生じます。この現象のことを糖化と呼ぶのです。

糖化:photo from Natsu
糖化:photo from Natsu

糖化の本質は、上記のように体内の糖分が臓器や組織などのタンパク質に結合することです。そして皮膚も立派な臓器の一つですので、皮膚でも糖化はもちろん起こります。皮膚のタンパク質に糖がどんどん結合することで、糖化が進行していきます。

以上が糖化の全体像です。糖化の本質は、開環した糖が持つアルデヒド基を起点として、組織中のタンパク質と連続的に化学反応を起こすことなのです。

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糖化と美容の関係性

では次に、糖化が起こると体内でどのようなことが起こるのかについて解説していきます。既に皆さんもイメージできているのではないかと思いますが、糖化が進行すると体内では以下のようなことが起こります。

  • 臓器の機能不全が起こる

  • 臓器・組織の老化が進行する

  • 疾患が引き起こされる

臓器や組織は身体の健康を保つために非常に重要な役割を担っています。そんな臓器や組織に外からやってきた糖がどんどん結合していくわけですから、この状態が好ましいはずがありません。糖化が進んでいくと臓器や組織の機能が低下し、いわゆる老化疾患が引き起こされます。

体内の糖化の進行が、動脈硬化やがん・白内障・認知症・骨粗しょう症など様々な疾患と関係していることが既に多くの研究で明らかになっています(参考文献)。

では皮膚においてはどうでしょうか?皮膚で糖化が進行すると、以下の現象が起こることが知られています(参考文献)。

  • シワやたるみの増加

  • 肌の弾力の低下

  • 肌のくすみ・黄色みの増加

  • 肌の炎症の促進

皮膚も体内のあらゆる臓器と同じく、糖化が進むと機能不全になります。その結果シワやたるみが増加したり、肌の弾力が低下したりします。これらの肌トラブルは、主に真皮組織のコラーゲン・エラスチン繊維が糖化することで起こります。

また糖化によって肌のくすみが生じることも有名です。主に表皮のタンパク質が糖化することで、肌の光学的な特性が変化します。その結果、肌の色味に影響を及ぼすことが知られています。

また糖化は肌の炎症を引き起こすことも知られています。実は糖化はタンパク質に糖が結合して終了するのではなく、結合した糖が更に分解を受けるという反応が続きます。その結果生成するのが最終糖化産物(AGEs)と呼ばれるものです。

AGEsの生成:photo from Natsu
AGEsの生成:photo from Natsu

AGEsという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、糖化が進行した際の最終生成物がAGEsなのです。通常体内の糖化レベルを直接的に測ることは難しいため、代わりにAGEsの量を測ることで糖化レベルを測定することが多いです。

ちなみにこのAGEsには、グリオキサールカルボキシメチルリジンなど様々な種類があります。特に上記に示したAGEsは、冒頭で示した化学反応性の高いアルデヒド基(CHO)を持っていますよね。

勘の良い方は気がづいたかもしれませんが、これらのAGEsも体内のタンパク質と非常によく結合します。糖化が連鎖的に起こるのは、分解を受けたAGEsも体内の臓器や組織と化学反応を起こして次々と結合していくためです。

そして更にこのAGEsは、体内に存在するRAGEなどのAGEs受容体と結合して炎症を引き起こすことも知られています。つまりAGEsの量が増加すると体内の炎症レベルが増加し、結果として様々な不調や疾患が引き起こされるのです。

このように糖化は、皮膚に限らず身体の様々な不調や機能不全に大きく関係しています。そしてこのような影響が積み重なって、老化現象や疾患が引き起こされるわけです。

美容と健康に配慮するためにも、糖化対策が非常に重要であることがお分かり頂けたのではないかと思います。

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糖化を促進する因子

では次にどのような因子が糖化を促進するのか、代表的な原因についてまとめていきます。糖化を促進する要因としては、主に以下の4つが知られています。

  • 糖分の摂り過ぎ

  • 血糖値の急激な上昇

  • 紫外線・酸化ストレス

  • 喫煙・副流煙

まず重要なのがやはり糖分です。糖化の根本的な原因は糖ですので、当然ながら糖分を摂り過ぎると糖化は進行します。これは実際に研究的にも実証されており、糖分の摂り過ぎが糖化を促進させることは紛れもない事実です。

また糖化は糖分の摂り方にも影響することが知られています。その中でも有名なのが血糖値の急激な上昇です。食事を摂ると血糖値が上昇しますが、この血糖値が急激に上昇することで糖化が起こりやすくなることが知られています。

体内に栄養素として吸収できる糖分の量は限られているため、例えば血液中にいきなり糖分が大量に投入されたら、吸収できなかった糖分が血液中に余ってしまうのはイメージしやすいと思います。このような余分な糖が、糖化反応に使われてしまうのです。

そして皮膚の糖化を引き起こす最も大きな原因が、紫外線やそれに伴って発生する酸化ストレスです。これらの因子は、体内で活性酸素を発生させる作用があることは有名ですね。そして活性酸素は、糖化の反応(特にAGEsの生成)を非常に強く促進することが知られています。

その他にも、タバコやタバコの煙(副流煙)などにも糖化を促進させる作用があることが知られています。これらの因子が糖化を引き起こす主要な原因です。

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糖化の対策方法

ここまで糖化のメカニズムや原因について詳しく解説してきました。糖化について全く知らなかったという方でも、なぜ糖化対策が重要なのか少しずつ分かってきたのではないかと思います。

それではこのような糖化を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?最後に、美容と健康に大きなインパクトをもたらす糖化の対策方法について、科学的根拠を元にオススメの方法をご紹介していきます。

ぜひ以降の内容を参考にして、糖化に負けない健康な肌と身体を導いていきましょう。

糖分の摂取に気を付ける

まずは何といっても糖分の摂取です。基本的には糖分を制限することが糖化の対策には最も有効です。ただし糖分を極端に制限することは、栄養管理の観点からも当然好ましくありません。重要なのは糖分の過剰な摂取を抑えること血糖値の急激な上昇を抑えることの2点です。

糖分の過剰な摂取については、やはりスイーツや菓子パンなど糖質の量が多い食品の摂取に気を付けることが重要です。これは当たり前ではありますが、重要なポイントとしてぜひしっかりと押さえておきましょう。

そしてもう一つ重要なポイントとして、血糖値の上昇があります。先ほども解説しましたが、血糖値が急激に上昇すると糖化が進行しやすくなります。これは体内に吸収できなかった過剰な糖分が糖化反応に回されるためです。

つまり同じ量の糖質を摂取する場合でも、血糖値の上昇を抑えることが出来れば糖化は進行しにくくなります。これは科学的にも証明されている事実です。

そこで注目して頂きたいのが、食品のGI(グリセミック・インデックス)値です。このGI値は食後の血糖値の上昇のしやすさを表す数値であり、GI値が低い食品は食後の血糖値が上がりにくいため糖化対策にオススメです。

以下に糖質を含む代表的な食品のGI値を分類した図を引用します。白米やパン・じゃがいも等はGI値が高いですが、全粒粉パン豆類などはGI値が低い食品です。その他にもそば玄米などがGI値が低い食品として有名です。

繰り返しになりますが糖分は身体の重要なエネルギー源となるため、糖化の進行が怖いからといって全く摂取しないのは大きな問題です。

もちろん過剰な糖分の摂取は避ける必要がありますが、それと合わせてGI値の低い食品から糖質を摂取するということも意識すると非常に良いと思います。血糖値の急激な上昇が抑えられることで、糖化の促進を抑制できることが期待できます。

食事方法・調理方法に気を付ける

こちらもよく言われているポイントですが、食事方法や調理方法に気を付けることも重要です。

  • よく噛んで食べる

  • 糖質を多く含む食品は最初に食べない

  • 揚げ物・焼き物を避ける

  • ゆで・蒸した食材を摂取する

「よく噛んで食べる」「糖質を多く含む食品は最初に食べない」も、血糖値の上昇に注目したポイントになります。いずれも血糖値の急激な上昇を防ぎ、糖化の抑制が期待できます。

また調理方法でも糖化対策が可能です。既に知られているのは、揚げ物や焼き物を出来る限り避け、茹でたり蒸した食材を摂取するという方法です。

AGEsは調理時の食材の加熱によっても生じることが知られており、特に200℃近い高温になりやすい揚げ・焼きといった調理を行うとAGEsが多量に生成することが知られています。これらの調理方法で調理した食材を摂取すると、AGEsをそのまま体内に摂取していることになりますので、糖化の観点からは好ましくありません。

AGEsが発生しにくい茹で・蒸し・煮物などの調理食品を摂取することも、立派な糖化対策の一つと言えるでしょう。

徹底的な紫外線対策

特に肌の糖化対策としてまず最も重要なのが紫外線対策です。具体的には日焼け止めを毎日使用することが重要です。

先ほども解説しましたが、紫外線にによって生じる活性酸素は肌における糖化反応を促進させることが既に多くの文献によって知られています。よって紫外線対策をしっかりと行い、活性酸素を発生させないことが極めて重要です。

日焼け止めの使用だけでなく、日傘や帽子など物理的な紫外線対策も有効です。外出時には1年を通して紫外線対策を行うことが、肌の糖化対策には非常に重要です。

抗糖化食材からのアプローチ

そして最後に、糖化を抑制する効果がある抗糖化食材についてもご紹介します。上記の対策と合わせて抗糖化食材を摂取することで、糖化対策は万全と言えるでしょう。

特に私が美容においてオススメする抗糖化食材は、以下の3つです。

  • ハーブ

  • マンゴスチン

  • カルノシン

例えばカモミールやドクダミなどのハーブ類を摂取することで、皮膚のAGEsレベルやシミ・黄色み・弾力などが改善することが報告されています(参考文献参考文献)。これらのハーブをスパイスやハーブティーとして摂取するのがオススメです。

またトロピカルフルーツのマンゴスチンにも、AGEsの減少に伴う皮膚弾力の向上・水分量の改善効果が確認されています(参考文献参考文献)。

カルノシンはペプチドの一種であり、サプリメントとして摂取することで体内のAGEsレベルを40~60%低下させる効果が報告されています(参考文献)。またカルノシンは化粧品成分として肌に塗っても抗糖化に効果的です(参考文献)。

このように抗糖化食材を上手く活用することで、体内の糖化レベル低下させる効果が期待できます。もちろんどれだけ抗糖化食材を摂取していても、糖分を過剰に摂取したり紫外線対策を怠ってしまうと糖化の改善は見込めません。

基本的には糖分の摂取にしっかりと気を付けながら、副次的な効果として抗糖化食材を上手く活用することがオススメです。

以上のポイントに気を付けて、ぜひ皆さんも明日の食事から糖化対策を実践してみてはいかがでしょうか。すぐに効果は感じられないかもしれませんが、5年・10年と続けていくことで圧倒的に若々しい肌と身体を手に入れることが出来るはずです。

本記事が皆さんの食生活を変えるきっかけになれば嬉しく思います。

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本記事のまとめ

以上今回は美容と健康において極めて重要な糖化について解説しました。糖化についてよく分からなかったという方も、本記事で改めて正しい知識が身に付いたのではないかと思います。

糖化は老化や病気の本質的な原因になっていると言っても過言ではありません。そして肌においても糖化はシワやたるみなどの様々な影響を及ぼしています。

最近こそ糖化に注目が集まるようになってきましたが、実は糖化は若いうちから早めに対策を継続することが極めて重要です。50歳・60歳になってから糖化対策を行っても既に手遅れだったということはよくあります。

本記事を読んで頂いた皆さんには、ぜひ早速明日から糖化を意識した生活を送って頂けると嬉しく思います。特に糖化は美容だけでなく健康にも極めて大きく関係していますので、健康的な身体を作るために非常に重要です。

本記事が皆さんの生活習慣を変えるきっかけになれば大変嬉しく思います。

今週も読んで頂きありがとうございました!そして来週からはまた有料記事が続きます。

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夏の暑さが少しずつ落ち着き始め、いよいよ秋の季節が近づいてきました。紫外線対策にしっかり取り組みつつ、保湿ケアにもそろそろ注意していきましょう。

それではまた来週、お会いしましょう!

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