最強のアンチエイジング方法!酸化に打ち勝つ「抗酸化力」を化粧品研究者が解説

酸化は肌の老化を引き起こす最も主要な要因として知られています。よって酸化に対抗する「抗酸化力」はアンチエイジングにおいて極めて重要です。本記事では、抗酸化の重要性や肌の抗酸化力を高めるアプローチについて、論文情報を元に解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2021.08.02
誰でも

肌の酸化は、シワやたるみといった肌の老化に極めて大きな影響を与えています。私はこれまでに何度もSNSで酸化に関する情報発信をしてきましたが、酸化は老化を引き起こす最も大きな要因と言っても全く過言ではないほど重要な要素です。

こういった観点から、肌の酸化にどのように対抗していくのか?という点は、アンチエイジングにおいて最も重要なポイントになります。この酸化に対抗する最も優れた手段の一つに抗酸化力があります。今回は美容における抗酸化力の重要性や抗酸化力を高めるアプローチについて、研究者の視点から分かりやすく解説したいと思います。

皮膚の酸化や抗酸化は非常に古くから研究されていますが、現在でも多くの化粧品メーカーが最先端の研究を行っています。酸化・抗酸化はそれだけ肌の老化を語る上で重要な要素であり、ぜひ一般の皆さんにも本記事を通してこれらの重要性を理解して頂ければと思います。

本記事を読んだらきっとすぐにでも抗酸化ケアを取り入れてみたくなるはずです。ぜひ参考にしてみて下さい!

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それでは早速内容の解説に入っていきましょう。

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肌の老化に大きく関わる「酸化」

これまでに何度も情報発信を行っていますが、「酸化」は肌の老化に極めて大きな影響を与えていることが知られています。

冒頭にも書きましたが、この酸化は皮膚が老化する最大の原因の一つと言っても全く過言では無く、多くの皮膚科学研究者が今でも最先端の研究を行っています。ここで改めて皮膚の酸化について、どのようなことが起こっているのかまとめておきたいと思います。

中学・高校の化学で皆さんも習ったと思いますが、酸化とは、酸素と化合する or 水素が脱離する化学反応のことを指します。ただしこの説明だと非常に分かりにくいので、今回はヘルスケアや美容に置き換えて分かりやすく説明していきます。

まず酸化の根本的な原因となる物質から覚えてみましょう。それが活性酸素です。この活性酸素には、大きく分けて以下の4つの種類があることが知られています。

  • 一重項酸素

  • ヒドロキシラジカル

  • 過酸化水素

  • スーパーオキシドアニオン

photo from Natsu

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実際には他にも様々な活性酸素種がありますが、代表的なのはこの4つです。これらの活性酸素は、その名の通り活性化した酸素と理解して頂ければOKです。そして活性化したことで、我々の身体のあらゆる組織にダメージを与える作用を持つようになります。

活性酸素が組織にダメージを与えるというのは、端的に言えば組織と結合したり組織を変化させてしまうということです。活性酸素のように電子を豊富に持つ分子は、我々の体内のあらゆる組織に結合することが出来ます。そして活性酸素が結合すると我々の組織は本来とは異なる構造に変化してしまうため、機能が低下したりダメージが発生することになります。こういったダメージが蓄積されることで、老化が引き起こされます。

このようにダメージ性のある活性酸素ですが、実は我々の身体の中では活性酸素が常に産生され続けています。それはなぜかというと、我々が呼吸をしているからです。呼吸という活動では、空気中から取り入れた酸素を細胞のミトコンドリアでエネルギーに変換しています。この過程では活性酸素が必ず産生されます

この呼吸による活性酸素の発生は我々が生きていくための副反応のようなものであり、誰もが避けられないものです。我々に寿命が存在するのは、呼吸によってダメージ性のある活性酸素を生み出し続けているからとも言えます。

しかし実はこのような呼吸以外にも活性酸素を発生させる要因があります。それが酸化ストレスです。酸化ストレスとは、活性酸素を発生させる作用自体のことを指します。酸化ストレスを生み出す代表的な外的因子の一つが紫外線です。

紫外線を浴びることで皮膚中で活性酸素が発生し、これらが皮膚の組織を攻撃することが古くから知られています。こういった組織への攻撃が積み重なることで皮膚組織が破壊・変性し、最終的にシワやたるみなどの老化現象として肌に現れるのです。

このように紫外線などの酸化ストレスによって活性酸素が発生したり、発生した活性酸素が皮膚の組織に結合する現象のことを、皮膚科学における広義の酸化と呼びます。これが皮膚における酸化の概要です。

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抗酸化力を高める2つのアプローチ

このように活性酸素が発生したり皮膚組織がダメージを受けることで、酸化反応が進みます。そして酸化反応によるダメージが蓄積されることで、最終的に肌の老化に繋がります。つまり老化の元凶は酸化にあるとも十分言うことが出来ます。

このような酸化によるダメージを防ぐためには、まず以下のような考え方を持つことが重要です。

  • 酸化の原因となる要素を排除する

  • 肌の抗酸化力を高める

まず酸化の原因となる要素を排除することで、そもそも活性酸素を発生させないという考え方が極めて重要です。この方法として最も効果的なのが、皆さんもよくご存知の日焼け止めです。

活性酸素を発生させる主要な外的要因は紫外線ですので、極論を言えば紫外線さえシャットアウトすれば活性酸素の発生を大きく抑えることが出来ます。我々化粧品研究者がしつこく毎日の日焼け止め使用を推奨しているのは、活性酸素の発生を抑えることで老化現象を食い止めるためです(単なる日焼けを防止するためではありません)。

一方で日焼け止めなどで万全に紫外線対策をしていても、やはり完全に紫外線をカットすることは極めて難しいです。そこで発生してしまった酸化ストレスに対抗する力、すなわち抗酸化力を高めることが極めて重要になります。

抗酸化力を高めることで、皮膚組織にダメージを与える前に発生した活性酸素を即時に消去することが可能となります。この肌の抗酸化力を高めるという考え方は、非常に多くの化粧品メーカーで支持されています。特に抗酸化力は加齢によっても低下しますので、歳を取っても高い抗酸化力を維持し続けることがアンチエイジングに極めて重要です。

ではこの抗酸化力を高めるアプローチにはどのようなものがあるでしょうか?それは以下の2つのアプローチになります。

  • 抗酸化酵素のはたらきを高める

  • 抗酸化物質を使用する

人間が酸化に対抗するために準備されている抗酸化システムは、抗酸化酵素を使ったシステムと抗酸化物質を使ったシステムの2つがあり、これらに対してそれぞれアプローチすることが抗酸化力を高めるために重要です。

抗酸化酵素とは、例えばカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼといった、活性酸素を消去する機能を持った酵素のことです。こういった酵素は皮膚の中に多く存在していますが、その量を更に増やすことが出来れば抗酸化力を高めることが出来ますよね。抗酸化酵素の働きを高めるアプローチは、主に植物エキスなどで行われています(参考参考)。

一方で我々の身近にある成分でも抗酸化力を高めることが出来ます。それが2つめの抗酸化物質を使用するというアプローチです。活性酸素を消去する働きを持つ抗酸化物質を普段から皮膚の内部に豊富に蓄えておけば、いざ活性酸素が発生してもこれを即座に消去することが出来ますよね。

このような抗酸化物質には植物など天然物由来の成分が極めて多く、人間が自ら生み出せない成分も多く存在します。一方で抗酸化物質はサプリメントや化粧品などにも汎用的に使用されているため、我々もこれらの抗酸化成分を外から補ってあげることが出来ます。以下には、化粧品やサプリメントに利用される代表的な抗酸化物質をまとめてみました。

photo from Natsu

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フラーレンとビタミンC誘導体以外は、化粧品・サプリメントいずれにも利用されています。今回はこのような抗酸化物質を化粧品やサプリメントとして利用した際のアンチエイジング効果について、論文情報を交えながら以降で解説していきます。

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抗酸化物質のアンチエイジング効果

今回は実際に抗酸化物質によるアンチエイジング効果を検証した論文を2つご紹介したいと思います。

Influence of Topical, Systemic and Combined Application of Antioxidants on the Barrier Properties of the Human Skin

こちらは2016年にドイツのグループから報告された研究論文です。抗酸化物質の摂取もしくは肌への塗布による美容効果を検証しています。

具体的には75名の被験者に対して、ビタミンE・ビタミンC・ポリフェノール・カロテノイドなどの抗酸化物質を含むタブレットとクリームを8週間使用したときの肌の変化をプラセボと比較して観察しています。タブレットは経口摂取、クリームは肌に塗って使用しています。その結果、以下のような変化が確認されました。

  • 抗酸化物質の摂取および肌への塗布によって、表皮厚みの増加・角層水分量の増加・弾力の増加・シワの減少が確認された

  • 上記の効果は、抗酸化物質を含むタブレットとクリームを併用した場合に最も大きかった

抗酸化物質を摂取または化粧品として肌に塗ることで、プラセボと比較して明らかなアンチエイジング効果が確認されました。また抗酸化タブレットとクリームの併用が最も高いアンチエイジング効果を発揮しました。その次に効果が高かったのは抗酸化クリームのみの使用です。

これらの結果から、抗酸化物質の摂取や化粧品としての使用は確かなアンチエイジング効果を有していることが確認できると思います。特に摂取と塗布の組み合わせが最も効果的であったことから、身体の内側と外側の両面からの抗酸化ケアが重要であると考えられます。

Efficacy evaluation of a multifunctional cosmetic formulation: the benefits of a combination of active antioxidant substances

こちらは2014年にブラジルのチームから報告された研究論文です。上記の論文と内容は近いですが、抗酸化物質を配合した日焼け止め・乳液による肌への効果を確認しています。

こちらの論文では45名の被験者に対して、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンE・植物エキスなどの抗酸化物質を配合した製剤を90日間適用しています。日中は上記の抗酸化成分を含む日焼け止めを、夜は乳液を使用しています。

そしてこれらの抗酸化成分のみを含まないプラセボの日焼け止め・乳液を使用した被験者と、肌の状態を比較解析しました。その結果、以下のような肌の変化が確認されました。

  • 抗酸化物質を含む日焼け止め・乳液を使用した被験者においてのみ、皮膚バリア機能(TEWL)の向上、シワの深さや数の減少、表皮厚みの増加が確認された

このように抗酸化物質を配合した製品を使用した場合においてのみ、アンチエイジング効果が確認されました。抗酸化物質を含まない製剤ではこれらの効果は確認されていません。

1つ目の論文とも大よそ共通する結果が得られており、抗酸化物質は確かなアンチエイジング効果を有していると言えそうです。

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抗酸化物質のオススメの使い方

このように抗酸化物質は、その抗酸化作用によって確かなアンチエイジング効果を有していることがお分かり頂けたのではないかと思います。期待できる主な美容効果には、以下のようなものがあります。

  • 皮膚水分量の向上

  • 皮膚バリア機能の向上

  • 弾力の向上

  • シワやたるみの改善

一方で世の中には、抗酸化物質よりも効果実感の高い化粧品成分が実は多く存在しています。例えばレチノール・ナイアシンアミド・セラミドなどはその代表例だと思います。しかこれまでに解説した皮膚老化のメカニズムを頭に入れて頂くと、抗酸化物質こそアンチエイジングに最も必要な成分であるということがお分かり頂けるのではないかと思います。

確かにレチノール・ナイアシンアミド・セラミドなどは美容に大変効果的ですが、これらの成分では皮膚老化の根本原因である酸化には十分に対抗することが出来ません。なぜなら、これらの成分の抗酸化作用は高くないためです。これらの成分は、基本的には抗酸化とは別のアプローチで高い美容効果を発揮しています。

しかしこれまでに何度も解説してきたように、皮膚老化の根本原因は酸化による組織の変性です。つまり抗酸化物質を使わないアンチエイジングケアは、言ってしまえば本来の皮膚老化の原因を無視してその他の効果で何とか肌を綺麗に見せようとしているスキンケアに過ぎません。老化に対処するためには、やはり抗酸化ケアが必須なのです。

皮膚の老化はゆっくりと進行するため、抗酸化物質による老化症状の改善も基本的には緩やかなものになります。しかし酸化の蓄積が老化に繋がることはこれまでの研究からまず間違いなく、この酸化に対抗するには抗酸化物質しか手段が無いのです。

こういった観点から、たとえ劇的な効果を感じなくても毎日のスキンケアで抗酸化物質を取り入れることが極めて重要であると考えられます。上記でご紹介した抗酸化物質を配合する化粧品を使用しても良いですし、サプリメントとして抗酸化物質を摂取しても良いと思います。抗酸化酵素のはたらきを高める植物エキスなどに注目しても良いかもしれません。

重要なのは、日焼け止めで活性酸素を発生させる紫外線をしっかりとカットすると共に、消去できなかった活性酸素に対抗するための肌の抗酸化力を高めることです。こういった先回りの抗酸化スキンケアには、今回ご紹介した抗酸化物質が非常に役に立ちます。

今回の記事を通して、皆さんにも抗酸化ケアの重要性が実感して頂けたのではないでしょうか。本記事を参考にして、毎日のスキンケアに「抗酸化ケア」をぜひ取り入れてみて下さい。

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まとめと編集後記

以上、今回は肌の老化に打ち勝つ「抗酸化ケア」の重要性について解説させて頂きました。私は何度も抗酸化ケアの重要性をSNSで発信していますが、これは皮膚科学を研究する研究者であれば誰もが賛同する内容だと思います。

皮膚の酸化にどのように対応していくか?というのは化粧品研究の永遠の課題です。どの化粧品メーカーでも抗酸化は必ずと言っていいほど化粧品開発のターゲットになっています。「酸化を制する者は美容を制す」と私はよく言っていますが、この言葉は今でも全くその通りだと思っています。

それだけ重要な「抗酸化」ですので、ぜひ皆さんも効果が小さいからといって抗酸化ケアを疎かにするのではなく、10年・20年先のお肌を見据えて抗酸化物質を取り入れてみて下さい。きっと抗酸化ケアをやっていて良かったと思える日が来ると思います。

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今週も読んで頂きありがとうございました。オリンピックの熱戦が続いており日本中が熱さを増しておりますが、同時に気温も大変上がってきておりますので熱中症等には十分気をつけてくださいね。またコロナも再拡大してきておりますので、感染にも十分お気を付けて。

それではまた来週お会いしましょう!

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