ブルーライトは肌に悪い?皮膚科学研究者が徹底解説!

近年ブルーライトが肌に悪影響を与えているという噂をよく耳にするようになりましたが、果たしてこれは本当なのでしょうか?今回はブルーライトが肌に与える影響について、論文情報を元に解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2021.11.01
誰でも

現代では誰もがスマートフォンを持つ時代になりましたが、そんな時に気になるのがブルーライトです。近年、スマホやPCから発せられるブルーライトが眼や肌に悪影響を及ぼしているという研究報告をよく目にするようになりました。果たしてブルーライトは本当に肌にとって悪者なのでしょうか?

今回は私たちの身近に存在するブルーライトが肌に与える影響について、論文情報などをもとに皮膚科学研究者が分かりやすく解説します。

  • ブルーライトってどんな光?

  • ブルーライトって結局肌に悪いの?

  • オススメのブルーライト対策方法

など、ブルーライトに関して皆さんが感じている様々な疑問について解説しています。

近年では在宅ワークの推進により自宅でパソコンに向かう時間も長くなったと思います。ブルーライトの対策をするべきかどうか迷っている人も多いと思いますので、ぜひ本記事を参考にしてみて下さい。

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それでは早速内容の解説に入っていきましょう。

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ブルーライトの特徴

まず初めにブルーライトとはどのような光なのか、その特徴や性質をしっかりと押さえておきましょう。皆さんもご存知のように光には様々な波長があり、可視光線の場合は光の波長によって見える色が異なります。

以下には主に太陽光に含まれる光を波長ごとに分けて示しています。ブルーライトは紫外線に近い可視光線にあたることがお分かり頂けるかと思います。

photo from Natsu

photo from Natsu

ブルーライトの皮膚へのダメージを理解するためには、まず上図に記載のあるエネルギーの大きさ皮膚透過性を理解する必要があります。

一般に光はその波長が短くなればなるほどエネルギーが大きくなります。これは言い換えると肌に与えるダメージも大きくなるということです。一方で波長が短くなるほど皮膚の内部にも浸透しにくくなるため、皮膚深部へのダメージは相対的に小さくなります。

上の図を見て頂くと、ブルーライトは可視光線の中でも紫外線と同等の高いエネルギーを有する光であることが分かりますね。またこの波長の光は基本的に皮膚の真皮層まで到達します。つまりブルーライトは、皮膚の深部まで届き紫外線に近いダメージを与える可能性のある光であるということです。

これらはブルーライトの影響を考える上で非常に重要ですので、ぜひ覚えておきましょう。

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ブルーライトが肌に与える影響

さて今回は論より証拠ということで、実際の研究結果を多数紹介してブルーライトの影響について理解を深めていきたいと思います。

国内外の研究機関からブルーライトが肌にどのような影響を与えるかについていくつかの論文が報告されていました。今回はこれらの研究結果についてそれぞれご紹介し、ブルーライトの影響について考察していきます。

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ブルーライトに関する資生堂の研究

近年報告された資生堂の研究で、ブルーライトが肌に与える影響が解析されていました。バイオフォトンと呼ばれる皮膚の酸化ストレスを可視化する方法を用いて、摘出した皮膚組織にブルーライトを照射した結果、以下のようにバイオフォトンが増加することが確認されています。  

引用:資生堂 <a href="https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002971">ニュースリリース</a>

引用:資生堂 ニュースリリース

さらに皮膚老化の原因となる過酸化脂質の量を解析した結果、ブルーライトの照射量依存的に過酸化脂質が増加することも確認されています。

引用:資生堂 <a href="https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002971">ニュースリリース</a>

引用:資生堂 ニュースリリース

これらの結果から、ブルーライトは皮膚の酸化ストレスを増大させ老化症状を引き起こす可能性が示唆されました。

酸化ストレスは皮膚老化の最も主要な要因であるというのは私もこれまでに何度も発信してきています。ブルーライトによってこのような酸化ストレスの増加が確認されたということは、少なからず皮膚老化のリスクがあるということを示唆していると考えられます。

ただしこの研究では太陽光レベルのブルーライトが照射されている点に注意が必要です。以下に示すように、スマートフォンやPCから発せられるブルーライトは太陽光に含まれるブルーライトよりも圧倒的に少ないことが知られています。強度としてはおよそ数百分の1程度と見積もられています。

引用:資生堂 <a href="https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002971">ニュースリリース</a>

引用:資生堂 ニュースリリース

ブルーライト自体のダメージ性はありそうですが、スマホやPCレベルのブルーライト強度で本当にダメージが生じるかどうかについてはもう少し見極める必要がありそうです。

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Effects of visible light on mechanisms of skin photoaging

続いては2021年に報告された可視光線と皮膚の光老化に関する最新のレビュー論文の内容について解説します。こちらの論文内には、ブルーライトと皮膚の老化に関連する研究結果が多数まとめられていました。

まず細胞を用いたin vitroの試験においては、主に真皮線維芽細胞においてブルーライトの照射による活性酸素の増加やコラーゲン分解酵素(MMP)の増加、細胞増殖性の低下が確認されています。これらの変化は皮膚老化の兆候であると言っても皮膚科学的には間違いありません。更にメラノサイトにおいてはメラニン産生の活性化も確認されています。

このようなin vitroの研究結果と対応するように、ヒトによる臨床試験でも同様の傾向が確認されています。

例えばVanderseeらの研究によると、健康なボランティア9名に青色光を照射した結果、皮膚内の抗酸化物質であるカロテノイドの量が照射量依存的に減少することが確認されました。これは活性酸素の産生を示唆する結果であり、ブルーライトにより酸化ストレスが生じるという資生堂の研究結果を支持するものです。

またCampicheらの臨床試験においては、33名のボランティアの腕に青色光を4日間連続で照射した結果、メラニン色素の増加肌色の変化が確認されました。またその他の研究においても同様の活性酸素の産生や色素沈着の誘発が確認されており、先ほどのin vitroの実験結果と一致しています。

これらの研究結果から、ブルーライトには活性酸素の産生色素沈着の誘発作用があると考えられます。私の感覚としても、ブルーライトによるこのような肌への影響を報告している論文は近年多いように思います。

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青色光は皮膚疾患の治療にも使われている

ここまではブルーライトが与えるダメージについて中心的に解説してきましたが、実はブルーライトは皮膚疾患の治療にもよく使用されています。つまりブルーライトには皮膚を良い方向に変化させる効果もあるのです。

例えば代表的なものにニキビの治療があります。青色LEDには皮脂分泌の抑制や細菌の殺菌効果があり、このような作用がニキビの改善において有効であることが知られています。青色LEDによるニキビ治療は米国FDAにも承認されている治療方法であり(参考)、国内のクリニックなどでも治療を受けることが可能です。

参考:<a href="https://omniluxmedical.com/products/omnilux-blue/">Omnilux blue</a>

参考:Omnilux blue

こういった観点から一部の皮膚科医や研究者においては、青色光を美容に上手く利用する必要性を主張している方もいます。

例えばこちらの論文では、健康なボランティアの皮膚にブルーライトを5日連続で照射し、皮膚生検によってその影響を解析しています。ブルーライト照射後に炎症や日焼けの症状は確認されず、DNA損傷や老化初期症状の誘発も確認されなかったことが報告されています。このような結果から短期間のブルーライトの照射は安全であり、皮膚科領域の施術でブルーライトを効果的に使用する重要性が主張されています。

さらにこちらの論文では、ブルーライトの照射によって一酸化窒素(NO)が産生され、これが皮膚血流の改善に効果的であることが報告されています。一酸化窒素には血管の拡張作用があることは有名であり、動脈硬化の抑制や高血圧の改善に効果的であることが知られています(参考)。ブルーライトはこのような一酸化窒素の産生を介して、肌のみならず全身の健康にとってプラスに働く可能性もあると言えそうです。

このようにブルーライトは肌や身体の健康にとって良い効果を与えるとする研究も多数報告されており、ブルーライトの安全性は高いと主張する研究者も一定数存在しています。

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結論:スマホやPCのブルーライトは肌に悪い?

以上ブルーライトに関する様々な研究結果をご紹介しました。これらの内容を踏まえて、最後にブルーライトにどのように対策するべきか?という疑問に対する個人的な結論を述べたいと思います。結論としては、現時点ではスマホやPCのブルーライトをそれほど気にする必要はないと私は考えています。

というのもここまで紹介した研究結果を見て頂くと分かるように、ブルーライトが肌にとって良い影響を与えるのか悪い影響を与えるのかについては、研究者や専門家の中でも意見が分かれています

酸化ストレスや老化症状を引き起こすという報告もあれば、ニキビの低減や一酸化窒素の産生を促進するという報告もあり、現時点のエビデンスでブルーライトの良し悪しを一概に判断することは難しいです。ただしどちらかというとブルーライトは肌にとって悪いとする研究報告が現時点では多いように思います。

皮膚科学的な理論から考えると、ブルーライトはUVAに近いエネルギーを有する光なので皮膚に一定のダメージを与えていてもおかしくありません。ただし一般に可視光線のダメージ性は紫外線と比較して圧倒的に低く、細胞の修復力や抗酸化力でもカバーできる範囲であるとも考えられます。

特に可視光線については皮膚疾患の治療にも汎用的に使われており、上手く利用すれば肌に良い影響を与えるのも事実です。このような観点で考えると、一概にブルーライトが肌にとって悪いと言い切るのは難しいです。

そしてもう一つ重要な観点がブルーライトの強度です。最初にご紹介した資生堂の研究報告にもあるように、スマホやPCから発せられるブルーライト強度は、太陽光や皮膚科におけるLED治療レベルと比較して圧倒的に弱いです。

特に今回ご紹介した研究では、ほとんどがスマホやPCの強度よりも圧倒的に強いブルーライトを照射した際の肌の変化を検証しています。当然光の強度が強くなれば肌への影響が大きくなるのは容易に想像でき、これはブルーライトに限らずその他の波長の光でも同様に言えることです。

スマホやPCなどのごく低強度のブルーライトが肌にどのような影響を与えるかについては未だ詳細に検証されていませんが、恐らく今回紹介した研究結果と比較して極めて小さな影響しか与えないと推定されます。また短期的なブルーライトの影響はこれらの実験から推定できるものの、長期的に繰り返し曝露されるブルーライトの影響について明らかにするのはさらに困難でしょう。

こういった観点から考えるとブルーライトが皮膚に与える影響については現時点では不明な点が多く、特にスマホやPCレベルのブルーライトが確実に肌に悪影響を与えるというエビデンスは十分に揃っていないと言えます。

ネット上にはスマホやPCのブルーライトの悪影響を必要以上に取り立てて消費者を不安にさせる広告もよく目にしますが、ブルーライトの悪影響を支持するエビデンスは圧倒的に不足しています。現段階ではスマホやPCのブルーライトをそれほど気にする必要は無いと思いますし、もし気になる方でもブルーライトカットのフィルムなどを画面に貼り付けておくといった対策で十分だと考えられます。

少なくとも肌への影響という観点では、必要以上のブルーライト対策は不要でしょう。ただし皆さんもご存知のように、スマートフォンのブルーライトが概日リズムや睡眠の質に影響を与える可能性が近年多数示唆されています。電子機器の使いすぎには十分注意し、適切に使用することが重要ですね。

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まとめと編集後記

今回はブルーライトが肌に与える影響について解説しました。この領域はまだまだ不明なことが非常に多いため何とも煮え切らない結論になってしまいましたが、現段階ではPCやスマホレベルのブルーライトをそこまで気にする必要はないというのが個人的な見解です。

むしろスマホやPCレベルのブルーライトについて心配するよりは、窓ガラスから差し込んでくる紫外線の方が圧倒的に悪影響が大きいと私は考えています。まずは日焼け止めでしっかりと紫外線対策を行うことを最優先に考えて欲しいと思います。

一方で近年ブルーライトの影響については化粧品メーカーも徐々に注目しつつありますので、今後ブルーライトの肌への影響が明らかになってくる可能性も高いです。ブルーライトに関する化粧品研究の今後の動きにもぜひ注目してみて下さい。

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今週も読んで頂きありがとうございました。気づいた方は恐らくいないと思いますが、Beauty Science Newsも無事1周年を迎えたということで、気持ちを新たにロゴを変えてみました(笑)。

それではまた来週、お会いしましょう!

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