この季節に要注意|寒暖差による肌荒れのメカニズムと対策方法を化粧品研究者が徹底解説

季節の変わり目に特に気を付けたいのが、寒暖差による肌荒れです。本記事では寒暖差による肌荒れのメカニズムと対策方法について、現役の化粧品研究者が徹底解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2022.12.05
誰でも

2022年も12月に入り、いよいよ年末が近づいてきました。そして毎年この季節に私たちを悩ませるのが寒暖差です。

日によっては朝夕と日中の寒暖差が20℃を超える日もあり、体調を崩しやすい時期でもあります。そしてこの季節には、肌の調子が極端に悪くなる人も非常に多いことがよく知られています。

実は寒暖差は、私たちの肌に大きな悪影響を与えていることが科学的にも明らかとなっています。寒暖差アレルギーという言葉も最近ではよく耳にするようになりましたが、寒暖差と肌には密接な関係性があります。

本記事では、この季節に特に注意したい寒暖差による肌荒れのメカニズムと対策方法について、現役の化粧品研究者が徹底解説します。

  • 外気環境と肌状態の関係性とは?

  • 寒暖差が肌の状態を悪化させるメカニズムとは?

  • 寒暖差から肌を守る方法

主に上記のポイントに絞り、最新の化粧品研究に基づいて寒暖差と肌状態の関係性について解説します。

意外と盲点になりがちな寒暖差ですが、この時期に肌が不調になりやすい人は実は寒暖差が原因かもしれません。ぜひ本記事を参考にして寒暖差対策を行ってみて下さい。

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外気環境と肌状態の関係性

寒暖差によって肌荒れが起こることは以前から知られており、特に11~12月の秋から冬に移行する時期に肌の不調を訴える人は非常に多いです。皆さんの中にも、毎年この時期に肌の調子が悪くなるという方は多いのではないでしょうか?

寒暖差は季節の変わり目に特に大きくなりますが、真冬や真夏でもエアコンの効いた室内と屋外を行き来することで寒暖差ストレスは発生します。

そもそも我々の肌は、一年を通して気温や湿度などの様々な外気環境の変化に常にさらされています。このような外気環境の変化が肌にどのような影響を与えているのかについて、まずは基礎的な研究結果をいくつか解説したいと思います。

例えば資生堂の研究によれば、外気温の変化は皮膚表面温度の変化を引き起こし、結果として皮脂量の増加皮膚血流の低下をもたらすことが以下のように報告されています。

前回の記事でも解説しましたが、特に皮膚の血流は健康で美しい肌を保つために非常に重要な要素です。また皮脂量の変化は、保湿強度のコントロールやニキビの出来やすさなどにも関わってきます。

また特に空気中の湿度が低下するこの季節においては、それに伴って角層の水分量が低下することもよく知られています(参考文献)。

肌の水分量が低下すると肌の乾燥が引き起こされ、これによって肌の不調がもたらされます。一度このような乾燥症状が引き起こされてしまうと、肌のターンオーバーが悪化して更にバリア機能が低下する「乾燥症状の負のスパイラル」に陥ることがよく知られています。

photo from Natsu
photo from Natsu

このように外気環境の変化に伴って皮脂分泌や血流・角層水分量などの肌の状態が変化し、その結果として肌にダメージがもたらされます。

このような温度や湿度の変化による肌への悪影響については、これまでに多数の研究結果が報告されています。一方でこれらの悪影響は、一般に気温や湿度が極度に上昇・低下する真夏や真冬に起こりやすい変化と言えます。

秋や春などの季節は気温や湿度が適度であることが多く、むしろ肌にとっては良い外気環境であると言えます。しかしなぜこの季節に肌の不調が起こってしまうのでしょうか?その答えの一つが寒暖差にあります。

近年では外気環境の変化に加えて、寒暖差自体が肌への刺激となることが大手化粧品メーカーを中心に多数報告されるようになってきました。

一般に皮膚というのは「状態の変化」を好みません。皮膚を取り巻く環境に変化があるということは、皮膚に何らかのダメージが加わる可能性があるということを意味しています。このような変化を出来る限りゼロに近づけることが、美肌への重要なポイントと言えます。

以降では寒暖差がどのようなメカニズムで肌の不調をもたらしているのかについて、化粧品メーカーの最新研究を解説していきます。

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寒暖差による肌荒れのメカニズム

それでは寒暖差によって肌荒れが起こるメカニズムについて、最新研究をご紹介します。少し内容が難しいかもしれませんが、この領域に注目して研究を進めているポーラと資生堂の研究結果を出来る限り分かりやすく解説していきます。

寒暖差刺激によるメラニン産生・炎症促進

2022年3月にポーラは、寒暖差刺激によって肌のメラニン産生と炎症が促進されることを報告しています(ニュースリリース1ニュースリリース2)。

引用:ポーラ化成工業 <a href="http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20220329_01.pdf">ニュースリリース</a>
引用:ポーラ化成工業 ニュースリリース

この研究では、培養したメラノサイト(メラニン産生細胞)とケラチノサイト(表皮細胞)に対して寒暖差ストレスに関係する変化を加えた際に、どのような遺伝子が変動するかが調べられています。

その結果、メラノサイトにおいてはメラニン合成を促進する遺伝子・メラニン産生を抑制する遺伝子が大きく増加することが明らかとなりました。これは寒暖差刺激によってメラニン合成が活性化され、それを抑えるために抑制因子が活発に合成されていることをよく表しています。

&nbsp; 引用:ポーラ化成工業 <a href="http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20220329_01.pdf">ニュースリリース</a>
  引用:ポーラ化成工業 ニュースリリース

また表皮細胞においては、メラノサイトを刺激する因子の遺伝子発現増加も確認されています。これもメラニン産生を促進する大きな要因になります。

またそれだけでなく、表皮細胞においては代表的な炎症性サイトカインであるIL-6の遺伝子発現量が増加することも確認されています。これは寒暖差刺激により肌の炎症が引き起こされることを意味しています。

引用:ポーラ化成工業 <a href="http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20220329_02.pdf">ニュースリリース</a>
引用:ポーラ化成工業 ニュースリリース

このように寒暖差刺激によって、メラニン産生の活性化や肌の炎症が引き起こされる可能性が示唆されました。

上記実験で使用した細胞は培養液中の等湿度環境で培養されていますので、これらの変化は温度差による刺激のみに起因するものと推定できます。寒暖差自体が肌に様々な影響を与えていることが示唆される、大変興味深い結果と言えるでしょう。

カスパーゼ14によるNMF産生の低下

寒暖差と肌状態の関係性に関する研究として有名なのが、資生堂のカスパーゼ14(Caspase14)です。こちらのニュースリリースで報告されています。資生堂は寒暖差や季節変化による肌の不調について、フィラグリンという皮膚タンパク質に着目した研究を盛んに行っています。

フィラグリンは皮膚バリア機能に非常に重要なタンパク質として知られています。アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬などの皮膚疾患との関係も報告されており、皮膚科学研究者なら必ず知っている皮膚タンパク質の一つです。

フィラグリンは肌本来の保湿成分である天然保湿因子(NMF)の供給源となるタンパク質です。フィラグリンが分解されることで、NMFが産生されます。

資生堂はこのフィラグリンの分解過程に関わる酵素を多数発見しており、その酵素の活性が肌のバリア機能に重要であることを多数の研究で示しています。このフィラグリンを分解する酵素の一つにカスパーゼ14があります。

photo from Natsu
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カスパーゼ14の活性が高いということは、言い換えればフィラグリンがどんどん分解されて天然保湿因子が産生されやすいということを意味しています。この状態が肌にとって理想的です。

さてここで資生堂のニュースリリースに戻ります。資生堂の報告によると、寒暖差刺激によって皮膚中のカスパーゼ14の遺伝子発現量が減少することが明らかとなっています。

引用:資生堂 <a href="https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/2670_w0p68_jp.pdf">ニュースリリース</a>
引用:資生堂 ニュースリリース

つまり寒暖差によってカスパーゼ14の発現が低下することで天然保湿因子の産生も低下し、結果として肌の保湿機能が低下すると考えられます。当然このような状態は好ましくなく、ターンオーバーの乱れや肌荒れに繋がると言えるでしょう。

なおカスパーゼ14は湿度の低下によっても発現量が低下すること、そして寒暖差刺激を繰り返すことで発現量が元に戻らなくなることも確認されています(参考論文)。

またカスパーゼ14はフィラグリンの分解だけでなく、角層の成熟という極めて重要な皮膚科学的機能も担っています。このような研究結果から、寒暖差による肌荒れにカスパーゼ14が大きく寄与している可能性があると言えます。

そして資生堂は低下したカスパーゼ14の発現量を増加させる成分として、キイチゴ果実抽出液を見出しています。このような植物エキスが、寒暖差ストレスに対処する成分として実際に化粧品に応用されています。

引用:資生堂 <a href="https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/2670_w0p68_jp.pdf">ニュースリリース</a>
引用:資生堂 ニュースリリース

このように寒暖差ストレスによって、皮膚の健康維持に重要なカスパーゼ14の活性が低下することが報告されています。寒暖差による肌の不調の大きな原因の一つであると言えるでしょう。

低温環境におけるタイトジャンクションバリアの低下

低温環境では、タイトジャンクションと呼ばれる皮膚において極めて重要な構造体の機能が低下することも報告されています。

タイトジャンクションとは、皮膚バリア機能の要となる構造です。表皮の顆粒層に位置し、アレルゲンなど肌荒れの原因となる物質の侵入を防ぐ砦となっています。タイトジャンクションが無い場合、我々の肌は機能を失うと言っても良いほど重要な存在です。

photo from Natsu
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このタイトジャンクションは、以下のように表皮細胞を固いヒモ状のタンパク質で縛ったような構造を取っています。これによって角質細胞どうしを強力に密着させ、アレルゲンなどの侵入をブロックしています。

photo from Natsu
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ポーラのニュースリリースによると、低温環境においてはこのタイトジャンクションの形成・成熟が低下することが報告されています。

かなり細かい話にはなりますが、タイトジャンクションの形成には外気温度の上昇によって活性化されるTRPV4と呼ばれるイオンチャネル(タンパク質)が重要であることが明らかになっています。温度低下によってTRPV4の活性が低下することでタイトジャンクションの形成・成熟が低下し、結果として皮膚のバリア機能が低下するというロジックです。

皮膚のバリア機能に重要なタイトジャンクションが形成されなくなるわけですから、アレルゲンが侵入しやすくなり結果として肌の炎症や肌荒れに繋がります。これが寒暖差によるバリア機能低下のメカニズムの一つとして考察されています。

引用:ポーラ化成工業 <a href="http://www.pola-rm.co.jp/pdf/po22r055.pdf">ニュースリリース</a>
引用:ポーラ化成工業 ニュースリリース

詳細な研究結果はこちらの論文に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。このようなタイトジャンクションの形成過程にも、寒暖差による刺激が関与している可能性が報告されています。

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寒暖差対策のポイント

これまでに解説したように、寒暖差が肌に悪影響を与えていることが最新レベルの研究で次々と明らかとなっています。改めて寒暖差による肌不調の原因について、以下にまとめました。

  • メラニン産生の促進

  • 炎症の促進

  • カスパーゼ14の発現低下による保湿機能低下

  • タイトジャンクションバリアの低下

かなりマニアックな皮膚科学情報も解説しましたが、このように化粧品メーカーの最新研究によって様々な側面から寒暖差の悪影響が解明されつつあります。

それではこのような寒暖差を防ぐには、どのような対策を行えばよいのでしょうか?一般的な寒暖差対策としては、身体を温めたり適度な運動を行うことなどが推奨されています。しかし外出すると寒暖差は必ず生じてしまいますし、完璧な寒暖差対策は現実的に考えてほぼ困難と言えるのではないかと思います。

スキンケア視点での寒暖差対策で重要なのは、寒暖差によって生じる肌トラブルを把握し、それに備えた対策を行うということです。つまりメラニン生成や炎症・バリア機能の低下に対応できる化粧品成分を使用することが重要になります。

具体的には以下のような美白成分・抗炎症成分・バリア機能向上成分を使用することが寒暖差対策にはオススメと言えるでしょう。

  • ナイアシンアミド

  • ビタミンC誘導体

  • トラネキサム酸

  • グリチルリチン酸ジカリウム

  • セラミド

これらの美容有効成分をしっかり取り入れることで、寒暖差によって生じる肌のダメージを最小限に抑えることが出来ると考えられます。各成分の美容効果についてはそれぞれ以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

もちろんなるべく寒暖差を発生させないように、室内の温度や屋外への移動に気を付けることも効果的と言えます。しかしそれより重要なのは、寒暖差が肌ダメージになることをしっかりと理解し、前もって上記の化粧品成分などで対策を行っておくことでしょう。

この事実を知っておくだけでも、今後のスキンケア方法や生活習慣は変わってくるのではないかと思います。ぜひ本記事を参考にして、寒暖差が肌に与える悪影響について理解を深めてみて下さい。

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まとめと編集後記

以上今回は、この季節に特に気を付けたい「寒暖差による肌荒れのメカニズム」について解説しました。最近何となく肌の不調を感じているという方は、もしかすると寒暖差が原因かもしれません。

寒暖差による肌への悪影響は、化粧品メーカーで最新レベルの研究が進んでいます。今後の研究進展にもぜひ期待したい領域です。

そして上記で紹介した美容成分を使用したり、出来る限り外気温度の変化を少なくするなどの対策でも肌の状態を安定化できることが期待できます。ぜひ本記事を参考にして、意識的に寒暖差対策に取り組んでみてください。

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