角栓はなぜ出来るのか?角栓にまつわる疑問を化粧品研究者が徹底解説!

誰もが一度は悩んだことのある「角栓」。角栓は多くの人が抱えている代表的な肌悩みです。今回は角栓にまつわる様々な疑問について、論文情報などに基づいて徹底解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2021.10.04
誰でも

多くの人が抱える代表的な肌悩みの一つに角栓があります。小鼻の角栓が気になる、角栓が原因で毛穴が目立ってしまうなど、角栓に関する肌悩みを感じている方は非常に多いのではないでしょうか?

一方で角栓とはそもそも何なのか?そして角栓はどのように形成されるのか?という点について、科学的な観点から解説した記事は世の中にほとんど存在しません。そこで今回の記事では、角栓にまつわる様々な疑問について化粧品研究者の観点から分かりやすく解説したいと思います。

  • 角栓はなぜ出来るのか?

  • 角栓の形成を抑えるためのポイントは?

  • 角栓は抜いた方が良いのか?

  • 毛穴の黒ずみは角栓が原因?

このような皆さんが日頃から感じている角栓に関する疑問について、論文情報などを元に科学的な観点から徹底解説します。

角栓は非常に身近な肌悩みだからこそ適切に対策したいですね。ぜひ本記事を参考にして、角栓について勉強してみて下さい。

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それでは早速内容の解説に入っていきましょう。

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毛穴の構造

角栓について理解を深めるためには、まず角栓が形成される場所である毛穴について理解を深めることが非常に重要です。 そこでまずは、毛穴の構造や特徴について解説していきたいと思います。以下には毛穴の周辺の模式図を示しました。

photo from Illustration AC

photo from Illustration AC

毛穴において重要なのは以下の2点になります。これらは非常に重要なのでぜひ覚えておいてください。

  • 毛穴の内部には角層や表皮が陥入している

  • 毛穴には皮脂腺が付随している

上記の図からも分かるように、毛穴の内部には角層や表皮の構造がそのまま陥入した形で存在しており、さらに毛穴付近には皮脂を分泌する皮脂腺が付随しています。

よくある間違いとして、毛穴には角層や表皮が無く真皮から直接毛が生えていると思っている方がいます。もちろんそんなことはなく、毛穴部分ではあくまで角層・表皮の構造が保たれたまま窪んだ構造を形成しているということをぜひ頭に入れておいてください。

また皮脂は毛穴から分泌されるという点も重要です。これもよくある間違いとして、皮脂と汗を混同してしまっている人が意外と多いです。しかし皮脂と汗は全くの別物であり、皮脂の主成分は油分汗の主成分は水分です。汗は汗腺から分泌されるため分泌される場所も異なっています。

このように毛穴は角層や表皮が陥入した状態で存在しており、盛んに皮脂が分泌される場所であるという特徴があります。この内容がこの後の解説にも関わってきますので、まずはしっかり押さえておきましょう。

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角栓に関する研究報告

それでは実際に角栓について研究した論文をもとに、角栓について詳しく解説していきます。ただし、実は角栓や毛穴の研究は非常に難しいことがよく知られており、化粧品メーカーでも研究はほとんど進んでいません。

その理由の一つが先ほど解説した毛穴の構造にあります。毛穴は上記のような非常に局所的で複雑な構造を取っており、このような構造体を細胞モデルなどを用いて構築するのは非常に難しいです。よって毛穴について研究したいときはヒトを使った試験に頼らざるを得ず、費用や安全性の面から中々研究が進んでいないのが現状です。

また角栓のような色々な物質が混ざり合った混合物の解析も非常に難しいことが知られています。大まかな構成成分などはこの後紹介しますが、細かい成分組成にまで踏み込んで研究するのは極めて難しいです。

このような状況ではありますが、以下に示すポーラの論文に角栓の形成メカニズムや毛穴への影響などが分かりやすく記載されていましたので、今回はこちらの内容をご紹介したいと思います。

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年齢による毛穴目立ちの実態調査

2007年にポーラが発表したこちらの論文では、毛穴目立ちに関する実態調査の結果が報告されています。その中で角栓と毛穴の関係性に関する結果もいくつかありましたので、ご紹介したいと思います。

こちらの論文では 10代から50代の日本人女性248名を対象に、毛穴目立ちに関連する因子が様々な角度から検証されています。その結果、以下のような非常に興味深い結果が得られています。

  • 目立つ毛穴は10代から20代にかけて急激に増加する

  • 20代から30代の目立つ毛穴には角栓が存在する

  • 40代以降の目立つ毛穴には角栓が存在しない

  • 毛穴の面積は年齢とともに増加する

  • 40代以降では、皮脂の量と毛穴の面積が相関しない

  • 角栓の約73%はタンパク質で構成されている

少し複雑ですが、一つ一つ整理して解説していきます。

まず毛穴目立ちは20代以降に顕著に現れ、20代~30代の目立つ毛穴の内部には角栓が存在することが明らかとなりました。一方で40代以降になると毛穴は目立っているにも関わらず、毛穴の内部には角栓が存在しないことが明らかとなりました。これは面白い結果ですね。

この結果は、毛穴が目立つ原因は年齢によって異なることを示唆しています。すなわち若年層における毛穴目立ちの原因は角栓にあり、40代以降における毛穴目立ちの原因はその他にあるということです。実際に40代以降も加齢と共に毛穴の面積は増加する一方で、皮脂量との関連性は見られなくなっていますから、40代以降では角栓が原因で毛穴が開いているわけでは無さそうですね。

40代以降に毛穴が目立つ原因として考えられるのは皮膚の老化に伴う肌のたるみです。たるみが進行することで重力に引っ張られて毛穴の面積が広がっていると考えられます。いわゆるたるみ毛穴というやつですね。これについてはその他の文献でも同様の内容が言及されています(参考文献)。

そして角栓がどのような物質から構成されているかについて調べると、約7割がタンパク質で構成されていることが分かりました。また引用文献から残りの約3割は皮脂により構成されていることも言及されています。つまり角栓はタンパク質と皮脂の混合物ということになりますね。

この論文で重要なのは、角栓が若年層における毛穴目立ちの原因になっている可能性があるということ、そして角栓はタンパク質と皮脂の混合物で形成されているということです。この2つのポイントを押さえておきましょう。

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角栓はなぜ出来るのか?

ここまでは論文の研究内容を紹介してきましたが、本題の角栓はなぜ出来るのか?ということについて更に詳しく解説していきたいと思います。

先程も解説したように角栓はタンパク質と皮脂の混合物から構成されていました。そしてタンパク質が7割と圧倒的に多いので、主にタンパク質から構成されていると言っても良いでしょう。ではこのタンパク質は一体何に由来するのか?ということになりますが、結論から言うと角層由来のタンパク質になります。

最初に解説した図からも分かるように、毛穴の内部にも角層や表皮が存在しています。そして角層・表皮は常にターンオーバーしていますので、毛穴の中で角層が剥がれ落ちることになりますね。このようにして、毛穴の中で剥がれ落ちて溜まった角層が皮脂と混ざり合って固形化した物体が角栓です。このようにして角栓は形成されるわけです。

photo from Natsu

photo from Natsu

ではこのようなメカニズムから考えると、角栓は皮脂の分泌量が多くなると出来やすくなるような気がします。しかしこれについてはいくつかの文献で否定されています。

例えばこちらに示す特許文献においては、皮脂の分泌量と角栓の数は相関しないことが確認されています。また先ほど解説したポーラの論文でも、皮脂は直接的に角栓の形成に関与しないことが考察されています。

角栓の形成に関与するのはどちらかと言うと角層の方であり、これは角栓の約7割がタンパク質だったことからも推定できます。つまり角層の状態が悪くターンオーバーが乱れてしまうと、大量の角層タンパク質が毛穴の内部に溜まってしまい角栓が出来やすくなると推定されます。

角栓を出来にくくするためには、表皮のターンオーバーを正常化するという極めて一般的なスキンケアが重要になると考えられます。

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毛穴内部の角層のターンオーバー

ターンオーバーを正常に保てば角栓は出来にくくなると考えられますが、実はこれが特に毛穴では難しいと考えられています。これは皆さんもご存知のように皮脂が原因です。皮脂が豊富に存在する毛穴内部では、酸化された皮脂による表皮へのダメージが起こりやすくなり、これによってターンオーバーが非常に乱れやすくなっています。

実際に毛穴が開いている部位では皮脂による表皮の炎症が起こっているという報告も多数存在します(参考文献参考文献)。このような表皮の炎症によってターンオーバーが乱れ、角層がごっそりと剥がれて角栓が形成されてしまいます。これは毛穴の性質上ある程度は避けられない現象であるとも言えると思います。

角栓を出来にくくするには、この角栓形成プロセスのどこかを化粧品等でしっかりと抑制しておくことが重要でしょう。取り組みやすいのは以下の3つになると考えられます。

  • 皮脂の酸化を抑える(日焼け止め、抗酸化成分)

  • 表皮の炎症を抑える(抗炎症成分)

  • 表皮のターンオーバーを整える(バリア機能改善成分)

皮脂の量そのものは角栓の形成にそれほど関係しないと考えられるため、重要なのは皮脂が表皮のダメージにならないように酸化を防ぐということです。そして仮に炎症が起きてしまってもこれを抑えるため、抗炎症成分を使用するのも良いでしょう。またターンオーバーを整えるという意味で、肌のバリア機能を向上させる成分も効果的と考えられます。

抗酸化成分や抗炎症成分の選び方・使い方については、ぜひ以下の記事の内容を参考にしてみて下さい。

このように、角栓の形成を抑えるためにはやはり一般的にも大切と言われる上記のスキンケアを継続していくことが重要だと考えられます。

毛穴に関連する肌トラブルは毛穴形状の遺伝による影響も大きいのは正直否定できませんが、正しいスキンケアに取り組むことでトラブルを最小限にすることは出来ると思います。

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角栓は除去した方が良いのか?

ここからは角栓にまつわる様々な疑問を科学的な観点から解説していきたいと思います。まず初めは、角栓は除去した方が良いのか?という点です。

出来てしまった角栓はどうしても抜きたくなるものですが、一方で角栓は自分で抜かない方が良いという話もよく聞きますよね。これについては一般の皆さんも意識している方が多いのではないかと思います。

ただし結論から申し上げると、角栓を抜いた方が良いか抜かない方が良いかといった研究結果はこれまでに存在していません(当然ですが)。私もどちらが良いのかは全く分かりませんが、個人的にはむしろ積極的に抜いた方が良いような気が少ししています。

ちなみに化粧品メーカーの角栓に対する考え方としては、やはり角栓を適切に除去しようという方向性が多いと思います。これは角栓を除去する洗浄料が多数開発されていることからもよく分かりますね。

メカニズムから考えても毛穴内部の表皮をケアするという意味では、角栓を除去してあげた方が美容有効成分が効率的に送達されるので良いと言えると思います。先ほど若年層では角栓が毛穴目立ちの原因になる可能性があると解説しましたので、やはり角栓は除去するべきでしょう。

角栓を取り除く手段として自分で物理的に抜こうが洗浄料で除去しようが、結局は角栓が取り除けていればあんまり関係ないのではないかというのが私の見解です。ここには色々な意見があるでしょうから、あくまで個人見解として捉えて下さい。

ただし毛穴角栓パックのような表皮まで剥がしてしまうような粘着系のシート製品で無理やり角栓を除去するのはあまりオススメしません。先ほども解説したように毛穴周辺は皮脂の影響でダメージを受けやすくなっていますので、優しく丁寧にケアすることが大前提です。この点だけはしっかりと覚えておきましょう。

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毛穴の黒ずみは角栓が原因か?

これも非常によく言われることでありますが、毛穴の黒ずみは角栓の酸化が原因であるというのは本当なのでしょうか?結論から言うとこれについても研究例は無いので真実は分かりません。しかし個人的には毛穴の黒ずみは角栓の酸化が原因ではないと思っています。

そもそも角栓は酸化するのか?というところから疑問です。角栓の主要成分はタンパク質ですが、タンパク質は空気中でそんなに容易に酸化する物質ではありません。また皮脂は比較的酸化しやすいですが、仮に皮脂が酸化したとしてもそれほど黒くなりません(実際皮脂に紫外線を当てて酸化させても黒くなりません)。

角栓が酸化して黒くなるというのは一見すると正しそうに見えるのですが、科学的に考えるとむしろ不自然なことの方が多いです。研究的にも証明されていることではないので、恐らく角栓が酸化して黒ずみに繋がっている可能性は低いと言って良いでしょう。

ではなぜ毛穴が黒ずむのか?という点については、様々な可能性が議論されています。毛穴の内部にある産毛が原因とする説(参考)や、毛穴の凸凹によって生じる影が原因とする説(参考)などが研究的には有力かもしれません。少なくとも角栓の酸化よりは科学的に筋の通っている仮説だと思います。

毛穴や角栓のケアで重要なのは、先ほどからも解説しているターンオーバーの正常化です。そのために先ほど紹介したような抗酸化成分や抗炎症成分を用いて優しくスキンケアを行うことが重要です。

こういったスキンケアを地道に積み重ねていけば、角栓の改善や毛穴の黒ずみの低減に繋がる可能性も十分にあると考えられます。まだまだ不明な点が多く確定的なことは言えないのがもどかしいですが、今後の化粧品メーカーの研究進展にも期待したいところです。

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まとめと編集後記

以上、今回は悩みの尽きない肌トラブルである角栓について解説しました。今回の記事を通して、角栓がどのように形成され毛穴にどのように影響しているのかがある程度理解できたのではないかと思います。ぜひ本記事の内容を参考にして、皆さんも角栓や毛穴トラブルの対策に取り組んでみて下さいね。

また一方で角栓の詳細な研究は化粧品業界内でもあまり進んでいませんので、今後の化粧品メーカーの研究にはぜひ期待したいと思います。角栓や毛穴の黒ずみに本当に有効なスキンケアが見つかれば最高ですね。そういった製品が早く出てくることを切に願いたいと思います。

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今週も読んで頂きありがとうございました。いよいよ10月がスタートし、年末に向けて走り出した感じがしますね。2021年のやり残しが無いよう、ぜひ残りの仕事・勉強も頑張っていきましょう!それではまた来週、お会いしましょう!

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