脂性肌の改善にオススメのスキンケアを化粧品研究者が徹底解説

肌のテカリやメイクの崩れなど、夏が近づくと脂性肌の悩みは尽きません。本記事ではそんな脂性肌の改善にオススメのスキンケアについて、現役の化粧品研究者が徹底解説します。
なつなつ(化粧品・皮膚科学の研究者) 2022.07.04
誰でも

夏の日差しが強くなり気温が上がるにつれて、皮脂の分泌が気になり始めたという方は多いのではないでしょうか?特に皮脂の量が多い脂性肌の方は、肌のテカリやメイクの崩れなど脂性肌特有の肌悩みが出てくる時期でもあります。

皮脂の量が多い脂性肌タイプの方は、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルも起こりやすいことが知られています。このような肌トラブルを悪化させないためにも、脂性肌の人こそエビデンスに基づいた正しいスキンケアを行うことが極めて重要と言えるでしょう。

本記事では現役の化粧品研究者である筆者が、脂性肌の改善にオススメのスキンケア方法について論文等の科学的根拠を元に徹底解説します。

  • 脂性肌とはどのように定義されるのか?

  • 科学的根拠に基づく脂性肌にオススメのスキンケア

主に上記の内容について、エビデンスに基づいて詳しく・分かりやすく解説します。

脂性肌は非常に厄介な肌質ですが、ちょっとした工夫で劇的に肌質を改善できる可能性もあります。かく言う私も数年前までは皮脂量が多く肌トラブルが頻発していましたが、脂性肌に合わせたスキンケアに取り組むことで肌の状態がかなり落ち着いてきました。

ぜひ本記事を参考にして、皆さんも脂性肌の改善に役立ててみて下さい。

また本ニュースレターでは無料会員・有料会員のメンバーを随時募集しております。毎週配信されるニュースレターを見逃さないようにするためにも、ぜひメンバーシップに登録頂ければ嬉しく思います。

上記の登録ボタンからメールアドレスで簡単に登録できますので、ぜひこの機会にご検討ください。それでは早速解説を始めていきましょう。  

***

脂性肌の定義とは?

そもそも皆さんは、どのような肌が脂性肌に分類されるのか考えたことがあるでしょうか?恐らく一般的なイメージとしては、単純に皮脂が多い肌が脂性肌に分類されると思っている人が多いのではないかと思います。

しかし「皮脂が多い」と一口に言ってもその量は様々です。どれくらい皮脂の量が多いと脂性肌に分類されるのでしょうか?脂性肌に分類されるための皮脂量の基準はあるのでしょうか?今回はそんな脂性肌の定義に関する疑問から、まずは紐解いていきたいと思います。

結論から述べると、皮膚科学的に「皮脂の量が〇〇以上であれば脂性肌である」という明確な基準は存在しません。国際的にコンセンサスが取れた脂性肌の分類基準は存在せず、極論を言えばかなり適当な分類であるというのが真実です。

ちなみにこれは、脂性肌以外の肌質にも当てはまります。一般に肌質には普通肌・脂性肌・乾燥肌・混合肌・敏感肌などの種類がありますが、これらを分類するための明確な基準は存在していません。

このような状況ですので、私は肌質分類の結果に囚われ過ぎないことを以前から強く主張しています。肌質分類の考え方についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

肌質の分類方法には明確な定義が存在しないため、例えばデパコスカウンターなどで肌質診断をしてもらうと、診断を受ける化粧品メーカーによっては異なる肌質に分類されてしまうということが十分に起こり得ます。カウンセリングなどで診断された肌質はあくまで参考程度にしておくことがオススメです。

このように肌質分類自体にはあまり意味が無いことを解説してきましたが、肌質について考えることに全く意味が無いかというとそうではありません。特に乾燥感と皮脂量という2つの肌状態の「軸」においては、これに合わせたスキンケアを行うことが重要です。

大切なのは肌質診断などで判定された肌質を妄信するのではなく、今現在自分自身が自分の肌をどう感じているかということです。自分の肌を最もよく知っているのは自分自身なのです。例えば今自分の肌が脂っぽいと感じているのであれば、あなたは脂性肌であると言って良いでしょう(明確な基準は存在しないのですから)。乾燥肌も同様です。

そして特に脂っぽい肌と乾燥しがちな肌は、これらの症状を改善することで肌の状態が劇的に良くなる可能性が非常に高いです。今回の記事は、この記事を読んでいるあなた自身が「皮脂が多い・脂っぽい」と感じており、その肌の状態を改善したいと考えている方にオススメの内容となっています。

次項からは皮脂の分泌を抑えて肌の状態を改善する科学的根拠に基づいた方法を多数ご紹介していきますので、ぜひご覧ください。

***

脂性肌に効果的なスキンケア

それでは実際に脂性肌に効果的なスキンケア方法について、論文情報を元に解説していきます。今回は皮脂の分泌を抑える化粧品成分やスキンケア法を多数ご紹介しますので、これらの中からぜひご自身に合う方法を見つけてみて下さい。

レチノイド(ビタミンA誘導体)

まず脂性肌に最もオススメの成分と言えばやはりレチノイド(ビタミンA誘導体)でしょう。レチノールなどのビタミンA成分には、脂性肌を改善する効果があることが一般に知られています。特にレチノイドには皮脂腺を退縮させる作用があり、その結果として皮脂量が減少すると考えられています。

また医薬品成分であるイソトレチノインは、古くから脂性肌によるニキビの治療に用いられています。海外ではニキビ治療の処方薬として一般に使用されていますが、残念ながら日本では保険適用外となり処方薬はありません。しかしイソトレチノインは、特に内服において重度の脂性肌・ニキビ症状に劇的な効果を発揮するため、自費診療として取り入れている美容クリニックも多いです。

例えばこちらの論文では、皮脂腺の増殖が確認された20名の被験者に対してイソトレチノインを2ヶ月間摂取してもらった結果、皮脂腺の数が統計的有意に減少したことが報告されています。更に治療終了から2年経過しても、皮脂腺の数や皮脂量の増加が認められないことが明らかになっています。

またこちらの論文では、中程度以上のニキビを有する30名の被験者にイソトレチノインを4カ月間摂取してもらった結果、皮脂分泌速度が83%減少し、摂取が終了してから1年が経過した後でも有意に皮脂分泌速度が抑制されていることが明らかとなっています。

このようにイソトレチノインの内服は非常に強力な皮脂分泌抑制効果を有しており、その効果が長く持続するという点もポイントです。しかし効果が強力な反面、副作用も大きいため、絶対に自己判断では使用せず医師の指導・処方のもと適切に使用するようにしましょう。

ご存知の方も多いと思いますがレチノイドの内服には胎児の催奇形性リスクが報告されており(参考文献)、特に女性が使用する場合には様々な注意点が存在します。繰り返しになりますがレチノイドの内服は必ず医師の指導のもと行い、自己判断での使用は行わないようにしてください。

またイソトレチノインの内服まで行わずとも、レチノールパルミチン酸レチノールなど化粧品にも配合されるレチノイド成分を肌に塗布するだけでも十分な皮脂抑制効果が期待できます。多くの人にとっては、化粧品に配合されているレチノイド成分を塗布使用するだけで十分な効果が得られるでしょう。

<合わせて読みたい>

アゼライン酸

アゼライン酸はレチノールと並んで皮脂抑制効果の高い成分です。特に脂性肌の方にとっては非常にオススメであり、私の個人的イチオシ成分でもあります。アゼライン酸はその高い皮脂抑制効果から、海外ではニキビ治療薬としての30年以上の使用実績があります。

こちらの論文こちらの論文において、アゼライン酸のニキビ・皮脂に対する確かな効果が検証されています。中程度のニキビを有する60名の被験者に対して20%のアゼライン酸を含むクリームを45日間使用した結果、ニキビの重症度が約60%低下することが明らかとなっています。また65名の被験者を対象とした試験では、アゼライン酸の使用によって皮脂の分泌量が約15%低下することも確認されています。

アゼライン酸は皮脂分泌の抑制のみならず、酒さ(肌の赤み)や肝斑の改善にも効果が期待できます(参考文献参考文献)。皮脂の抑制に留まらず幅広い美容効果を有しているという観点からも、オススメ出来る成分です。日本国内ではあまりメジャーではない成分ですが、私自身も毎日使用して効果を実感しており、個人的には非常にオススメ出来る成分だと思います。

10%前後の濃度でも十分に高い皮脂抑制効果が期待できますので、脂性肌にお悩みの方はぜひアゼライン酸を試してみて下さい。

<合わせて読みたい>

ナイアシンアミド

脂性肌にオススメの3つ目の成分はナイアシンアミドです。私のニュースレターではお馴染みの成分となりましたが、ナイアシンアミドにも高い皮脂抑制効果が期待できます。

こちらの論文では、日本人におけるナイアシンアミドの皮脂抑制効果が検証されています。100名の日本人被験者に対して2%のナイアシンアミドを含む保湿剤を4週間使用してもらった結果、皮脂分泌量が有意に低下することが確認されています。

以前の記事にもあるように、ナイアシンアミドは皮脂分泌抑制効果だけでなく、紫外線による皮膚ダメージの修復効果や抗酸化作用、また美白効果が認められており、幅広い化粧品に配合されている優秀な成分です。

またナイアシンアミドは先ほど紹介したレチノールやアゼライン酸との併用もオススメであり、これらの成分を合わせて使用することで脂性肌の改善には高い効果が期待できるでしょう。

<合わせて読みたい>

ビタミンC誘導体

ビタミンC誘導体もナイアシンアミドと合わせて皮脂分泌の抑制にオススメの成分です。

こちらの論文では、ビタミンCの誘導体の一種であるパルミチン酸アスコルビルアスコルビルリン酸Na(APS)による皮脂抑制効果が検証されています。それぞれ親油性および親水性のビタミンC誘導体として、多くのスキンケア製品に使用されています。

11名の女性被験者に対して上記の2つの成分を配合した乳液を90日間使用してもらった結果、皮膚の抗酸化力の向上皮脂分泌量の著しい減少効果が確認されています。ビタミンC誘導体の美容効果については前回の記事もぜひ参考にして頂ければと思いますが、自分に合った成分を複数組み合わせることで非常に高い美容効果が期待できます。

ビタミンC誘導体もナイアシンアミドと同じく、抗酸化作用や美白作用など皮脂抑制に留まらない幅広い効果を有しています。このような万能成分はぜひ積極的にスキンケアに取り入れたいですね。

<合わせて読みたい>

ボトックス注射

皮脂分泌の抑制に高い効果を発揮するのがボトックス注射です。ボトックスは近年よく耳にするようになりましたが、美容皮膚科領域で非常に人気が高まっている施術の一つです。

ボトックスはボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンと呼ばれる毒素成分を肌に注入する施術のことを指し、主にシワやたるみの改善などの高いアンチエイジング効果があることが知られています。

毒素成分の注入なんて危険じゃないの!?と感じた方もいるかもしれませんが、ボトックスは美容皮膚科領域で多くの使用実績がある非常に効果的な方法であり、シワの治療法として米国FDAの認可も取得しています。

ボトックス注射に微量に含まれるボツリヌストキシンは、神経に働きかけて筋肉を弛緩させる作用を有しており、その作用を利用してシワやたるみ部分の筋肉の収縮を抑え、アンチエイジングに効果を発揮します。

更にマイクロボトックスと呼ばれる方法で皮膚の浅い位置にボトックス注射を行うことで、皮脂腺の活動を抑えて皮脂分泌の高い抑制効果を発揮することも知られています。

例えばこちらの論文では、25名の脂性肌の被験者を対象としてボトックス注射による皮脂抑制効果が検証されています。ボトックス注射の1週間後から皮脂の抑制効果が現れ、3ヶ月が経過した後でも有意に皮脂量が減少することが確認されています。また21名(91%)の被験者が、脂性肌の治療法としてボトックス注射に満足していると回答しました。

ボトックス注射は自費診療のみの施術となりますが、皮脂分泌のみならずシワの改善やリフトアップにも劇的な効果を発揮するため近年人気が高まっています。マイクロボトックスの場合は、顔全体でおよそ5万円程度が費用の相場であり決して安くはありませんが、一度注入すると効果が半年程度は続くのがポイントです。

個人的な見解ですが、高級な化粧品に毎月数万円のお金を掛けるくらいなら、私は年に2回ボトックス注射を打った方が遥かに効果的・経済的だと思います。5万円のボトックス注射を年2回打っても毎月の負担は1万円を切ります。このペースであればボトックスの効果が持続しますので、化粧品の出費は必要最低限で済むでしょう。

ボトックスは脂性肌の改善だけでなくアンチエイジングにも幅広くオススメの施術ですので、余裕がある方はぜひ試してみると良いでしょう。

その他の成分・サプリメント

これまでにご紹介した化粧品成分や美容医療の施術は脂性肌の改善に極めて効果的ですが、その他にも皮脂抑制効果のある成分やサプリメントが各論ベースで報告されていますので、以下にご紹介したいと思います。

まずこちらの論文では、緑茶エキスによる皮脂抑制効果が報告されています。具体的には22名の被験者に対して緑茶エキスが含まれる乳液を60日間継続使用してもらった結果、皮脂分泌量の有意な減少が確認されています。

緑茶にはカテキンを始めとするポリフェノールが豊富に含まれており、これらの成分が皮脂分泌の抑制に寄与していると考えられています。緑茶エキスは化粧品成分表示ではチャ葉エキス、医薬部外品名称ではチャエキス(1)と表記されていますので、これらの成分表示を参考にすると良いでしょう。

またこちらの論文では、甘草(カンゾウ)エキス由来成分であるリコカルコンAの皮脂抑制効果が報告されています。リコカルコンAは男性ホルモンの活性化を制御することで皮脂の分泌を抑制する成分です。

軽度のニキビを有する91名の被験者に対し、リコカルコンA とL-カルニチンを含む化粧品を8週間継続使用してもらった結果、50%を超える皮脂量の減少とニキビ病変の改善効果が確認されています。このことから、甘草エキス甘草フラボノイドなどの甘草由来成分を含む化粧品も皮脂抑制への効果が期待できます。

最後にこちらの論文では、インドの伝統医学アーユルヴェーダで用いられているハーブ由来成分トリファラが、皮脂分泌が非常に多くなる頭皮脂漏症に効果を示すことが報告されています。頭皮脂漏症を有する80名の被験者を対象に、8週間に渡って1gのトリファラを摂取してもらった結果、トリファラ摂取群において頭皮の皮脂レベルが有意に減少することが確認されています。

トリファラはプレバイオティクス成分として整腸作用があることも知られており、便秘やお通じの改善にも効果的と言われています。興味のある方はこのようなサプリメントを試してみるのも効果的かもしれません。

***

まとめ:脂性肌にオススメのスキンケア

以上、脂性肌にオススメのスキンケア方法について科学的根拠に基づいて幅広く解説しました。色々なスキンケア方法をご紹介しましたが、主要なものについて改めて以下にまとめておきます。

  • レチノールやアゼライン酸を配合する化粧品

  • 特に重度の場合イソトレチノインの内服(ただし医師の処方が必要)

  • ナイアシンアミド・ビタミンC誘導体を配合する化粧品

  • ボトックス注射

主に上記が脂性肌の改善に効果のあるスキンケア方法になります。基本的にはレチノールとアゼライン酸を配合する化粧品を試すことが、脂性肌改善の第一選択としてオススメです。

またボトックスも少々値段は張りますが皮脂分泌の抑制には即効性・持続性がありオススメです。イソトレチノインの内服は特に重度の脂性肌にオススメの方法ですが、様々なリスクもありますので医師の指導のもとで使用するのが必須となります。

このようなエビデンスのあるスキンケア方法に基づいて、段階的に脂性肌の対策を行っていくのがオススメです。脂性肌に悩んでいるからと言ってネットの情報を妄信して闇雲にスキンケアを行うのではなく、今回紹介したエビデンスのある手法を適切に取捨選択しながら対策するのが一番のポイントでしょう。

ぜひ今回の記事を参考にして、しつこい脂性肌の改善に役立ててみて下さいね。

***

編集後記

以上、今回は脂性肌の改善にオススメのスキンケアについて解説しました。私自身も数年前までは非常に皮脂が多いと感じる脂性肌でしたが、特にレチノールとアゼライン酸を毎日のスキンケアに取り入れ始めてから、明らかに皮脂が減少して肌のコンディションが改善したと感じました。

特にこれからの季節は、皮脂の量をなるべく抑えて快適に過ごしたいものです。今回紹介したスキンケア法を用いれば脂性肌には十分対応することが出来ますので、ぜひ皆さんも試してみて下さい。

今週も読んで頂きありがとうございました!そして来週からはまた有料記事が続きます。継続的な配信をご希望の方はぜひ以下よりログイン後、有料会員にご登録頂ければ幸いです。

今週から一気に気温が上がり、夏の始まりを感じますね。熱中症と紫外線対策により一層注意して、過酷な夏を乗り切りましょう。それではまた来週、お会いしましょう!

・美容の正しい知識が身につく
・最先端の美容情報をお届け
・過去の記事も読み放題
・毎週届き、いつでも配信停止可
・読みやすいレターデザイン

すでに登録済みの方は こちら

サポートメンバー限定
化粧品研究者が解説|敏感肌でも使えるレチノールのススメ(2024年最新...
サポートメンバー限定
ビタミンCサプリは飲む意味なし!?化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
2024年最新版|優秀成分『ナイアシンアミド』の美容効果と使い方
サポートメンバー限定
正しい?間違い?スキンケアのギモンを化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
ニキビ肌|徹底改善スキンケア特集
サポートメンバー限定
グリセリンフリーは選択すべき?化粧品研究者が徹底解説
サポートメンバー限定
化粧品研究者が徹底解説|エビデンスに基づく最高のスキンケア方法【Par...
サポートメンバー限定
化粧品研究者が徹底解説|エビデンスに基づく最高のスキンケア方法【Par...